「『プラウド・ヴァレー』と人種を超えた連帯の夢ーーポール・ロブスンとウェールズ労働運動」

中央大学人文科学研究所編『ローカリティのダイナミズム』(中央大学出版部, 2024収録)

合衆国の歌手ポール·ロブスンと、英国とくにウェールズ地方の労働運動(炭鉱労働者の運動)の連携、両者の関係性から生まれた映画『プラウド·ヴァレー』(1940)について書きました。英国滞在時代のポール·ロブスンの動きについては、以前にも文章を書いたことがありますが、とても興味深いです。

【本論文からの引用】「階級問題を扱った作品に人種の視点をもち込むという本作のアプローチは、二〇年代から三〇年代の国際共産主義運動の動向、とくに共産主義インターナショナル(コミンテルン)が黒人解放運動を継続的に支援していたことを踏襲していると考えられる。また、仕事を探しながら世界を移動している男というデイヴィッド·ゴライアス役の設定は、石炭の輸出港であるカーディフに、船舶や港湾での働き口を求めて、カリブやアフリカの植民地諸国を含む、世界中から黒人労働者が集まっていた事実を下敷きにしている。後述するように、当時、コミンテルンと連携して活動していた黒人解放運動家や、反帝国·反植民地主義を訴えるパン·アフリカ主義者は、まさにデイヴィッドのような移動労働者たちを組合に勧誘して、世界の黒人労働者を組織することを目指していた。」